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【志布志防災X】第21回 線状降水帯の予測精度を高めるために
9月20日からの1週間は、お彼岸ですね。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われますが、まだまだ日中は暑い日が続いているような気がします。
さて、前回は「線状降水帯の発生を予測することは、とても難しい」というお話をしました。では、気象庁は難しいからといって、何もしていないのでしょうか?もちろん、そんなことはありません。
気象庁では、線状降水帯の予測精度を少しでも高めるために、様々な観測や研究を続けています。
気象庁が挙げている主な課題は、次の3つです。
(1)水蒸気がどこから、どれくらい流れ込んでいるのかを正確に捉える
(2)コンピューターによる天気予報の計算方法をさらに良くする
(3)線状降水帯の発生や予測に関する情報を、分かりやすく提供する
この中でも、特に重要なのが(1)の「水蒸気を正確に捉えること」です。
水蒸気を知ることが大切


(写真は気象庁HPより引用 左:ラジオゾンデ、右:ラジオゾンデ自動放球装置)
線状降水帯が発生するためには、大量の水蒸気が必要です。ところが、「空気中に水蒸気がどれくらいあるのか」「その水蒸気がどの高さに、どれくらい分布しているのか」「どこからどれくらい流れ込んでいるのか」を、正確に知ることは簡単ではありません。
そこで活躍するのが、「ラジオゾンデ」という観測機器です。
ラジオゾンデは、風船につるして空高く飛ばしながら、気温や湿度、気圧、風などを観測します。ラジオゾンデによる観測は、日本だけで行われているわけではありません。世界各地で、ほぼ同じ時刻に観測が行われ、そのデータは国際的に共有されています。日本では、基本的に1日2回、午前9時と午後9時に観測が行われています。
このほかにも、気象衛星、気象レーダー、アメダス、ウィンドプロファイラなど、様々な観測機器を使って大気の状態を調べています。さらに、コンピューターによる新しい予測方法の開発や、AIを使った予測技術の研究も進められています。
大きな課題は「海の上」
これだけたくさんの観測をしていても、まだ大きな課題があります。それは、海の上の観測が少ないことです。ラジオゾンデの観測地点は、陸地に偏りがちです。しかし、線状降水帯に必要な大量の水蒸気は、暖かい海の上から日本付近へ流れ込んでくるのです。つまり、「海の上の空気がどれくらい湿っているのか」を詳しく知ることが、線状降水帯の予測にはとても重要なのです。もし、陸地だけでなく海の上でも、細かい間隔で大気の状態を観測できれば、予測の精度をさらに高められる可能性があります。
天気予報は「巨大なジャングルジム」で計算している?

(イラストは、気象庁HPより引用)
前回も少しお話をしましたが、コンピューターによる天気予報の仕組みを簡単に説明してみましょう。
天気予報では、地球全体を細かい格子(マス目)に分け、その格子の一つ一つについて、気温や気圧、風、水蒸気などの値を計算します。イメージとしては、地球全体に巨大なジャングルジムを置いたようなものです。そして、鉄の棒が交わる「格子点」のデータを使って、これからの大気の変化をコンピューターで計算していきます。
気象庁ホームページには、「不規則に分布した観測データから、規則的な格子点での初期値を与える過程を客観解析と言います。より正確な初期値を作成することが精度の高い数値予報につながるため、客観解析の手法にも多くの改良が兼ねられてきた。」と記載されています。詳細は省略しますが、例えば、ある格子点Aで気温が20℃、格子点Cで22℃だったとします。その間にある格子点Bを観測できていなければ、「AとCの間だから、Bは21℃くらいだろう」と推測します。このように、周りの観測値から、その場所の値を推測する方法を「内挿(ないそう)」といいます。

「平均的な値」では激しい現象を捉えにくい
内挿によって値を推測することは、天気予報にとって重要な方法です。しかし、実際の大気には、場所によって気温や風、水蒸気などが急激に変化することがあります。特に、非常に強い風や激しい雨など、狭い範囲で起こる現象は、周りのデータから推測した値では、実際より弱く計算されてしまうことがあります。
線状降水帯も、非常に狭い範囲に強い雨が集中する現象です。だからこそ、できるだけ多くの場所で、できるだけ正確な観測データを集めることが重要になります。
観測技術の進歩に期待
線状降水帯の予測は、まだまだ難しい課題です。しかし、気象庁をはじめ、世界中で観測技術やコンピューターによる予測技術の研究が進められています。
特に、これまで観測が少なかった海上の大気の状態を詳しく知ることができれば、線状降水帯の予測精度が大きく向上する可能性があります。
「観測する」「データを集める」「コンピューターで計算する」「予測情報として伝える」。こうした取り組みが少しずつ進むことで、将来、線状降水帯をより早く、より正確に予測できるようになることが期待されています。
一日でも早く予測技術が進歩し、大雨から命を守るための情報が、より正確に届けられるようになることを願いたいですね。
※(おことわり)
気象庁の観測技術や予測技術は日々進歩しています。今回記載した内容は、私が気象予報士試験を受ける際に勉強した内容で、すでに古い技術になっている可能性があります。
これまでの志布志防災Xは、以下のリンクから確認できます。
気象防災アドバイザー・気象予報士 黒川晃






